エアタクシーの実現はそう遠くない

旅行業界の需要が回復に向かう中、航空宇宙産業では10年後に何千台もの「エアタクシー」が都市の上空を飛び交う世界を目指し続けています。しかし、このビジョンを実現するには、技術的課題、規制上の課題、社会的課題をそれぞれ解決しなければなりません。

現在では、航空宇宙産業の大企業やスタートアップ企業によってさまざまなエアタクシープログラムが誕生しています。いずれの企業も、より進化した航空宇宙工学の手法を導入し、既存の規制の枠組みに沿いながら通常の航空機と同水準の安全対策を実現しようとしています。

しかし、製造工程が複雑な少量生産の産業は、どのようにして大量生産に転換できるのでしょうか。幸いにも「コボット(協働ロボット)」の技術と人工知能(AI)が大幅に進歩したことで、エアタクシーが実現するのはそう遠くない未来かもしれません。

 

エアタクシーの製造における課題

製造業の観点から見れば、ほとんどのエアタクシーは、今あるサプライチェーンを流用し、既存のプロセスを利用して構築されるでしょう。しかし、エアタクシーに近しい産業である自動車業界などがデジタル化や自動化へ投資することで発展してきたかたわら、そのような投資をほぼ行ってこなかった、製造規模の小さい航空宇宙産業は、どのようにして規模を拡大していけばよいのでしょうか。

一部の航空宇宙メーカーは、自動車産業で使用されている自動化技術をリフト&シフトしようと検討していますが、このアプローチには以下の理由から問題があります。

  1. ラインの再設計が必要
    多くの航空宇宙関連企業は、今日の最先端の自動車工場を支えている大規模な自動化に投資する時間も資本もありません。自動化を大規模に導入するためには、無数の生産ラインを再設計する必要があるためです。
  2. 投資の回収が困難
    自動車業界のテンプレートに基づき新しい生産ラインを自動化したとしても、生産量に対して十分な売上高を確保できないため、先行投資の回収が困難です。
  3. 低コスト効率
    自動車業界の生産基盤の拡大を後押ししている自動化の大半は、単一の機能、あるいは少数の機能を処理するように物理的に構築されており、対応する構成の数も限られています。航空宇宙産業特有の少量生産や複雑な構成を考慮すると、自動車業界のように単機能の自動化によってコスト効率よく生産を拡大することは不可能です。

 

打開策は「コボットとAI」

これらの問題の解決策は大規模な自動化を低コストで導入することであり、同時に移行における混乱を最小限に抑えることも必須です。突き詰めると、航空宇宙産業向けに開発する自動化というものは、生産規模に関係なく機能し、価値を生み出すものでなければなりません。コボットとAIの組み合わせは、これらの要件を満たす大きな可能性を秘めているものです。

コボットとは、人間中心の生産ラインで自動化を実行できる汎用型のヒューマノイドロボットです。コボットを中心に据えるプラットフォームは、巨大なシングルアームガントリーのように単一の機能しか実行できない装置が配置された組立ラインに合わせて改造する必要はありません。コボットは、人間が作業する空間に配置することで、人間と同じように物理的にインタラクティブな動作に対応できます。そのため自動化を既存の生産ラインに合わせてうまく適用できるようになります。これは航空宇宙メーカーにとって必要不可欠な要素です。

さらに、単一のコボットで複数の作業を行うことも可能です。タスクごと、あるいは機能ごとに物理的な自動化を設計する必要もありません。手作業による少量生産の工場にコボットを配置し、複数の機能を実行させることによって素早く投資利益率を高めることができるので、コボットは航空宇宙産業に自動化を導入するための重要な要素といえます。

 

ソフトウェアが、コボット実現への大きな要素

自動化の解を導く方程式の中で、物理的な側面は半分に過ぎません。自動化を実現するにはソフトウェアが必要であり、コスト面で考えてもソフトウェアは自動化を導入する際の大きな原動力になります。

自動車業界ではこのようなソフトウェアは手続き型で記述されているため、単一の機能のみを実行するのに適しています。一方、人間が主導する生産ラインでは、人間のように広範囲にわたる仕事を処理できるコボットを実現するための手続き型ソフトウェアを開発することは、不可能とは言わないにしても困難です。そこでAIの出番です。

複雑かつ実用可能なAI(例えば自動運転に利用されるAIなど)の急速な進歩によって、豊富な機能を持つ一連の開発ツールや手法が生み出されました。これらは、ファクトリーオートメーション(FA)をはじめ、さまざまなユースケースに適合させることができます。AI開発プログラムのあらゆる段階にわたって、データ収集、キュレーション、処理を自動化することで、自動化ソフトウェアの開発コストを大幅に削減できるのです。

コボットとAIの組み合わせは、航空宇宙産業にFAのターンキーソリューションをもたらすわけではありません。しかし、この新たな選択肢によって桁違いの導入コストがかかってしまう課題を解消できます。また、一連の適切なAI開発ツールを採用することで、航空宇宙メーカーはこれまで自動化を設計するのに要していた時間と比べて短期間かつ低コストで自動化を導入できます。これによって航空宇宙メーカーは、大量のエアタクシー製品を供給する準備を整えることができます。