膨大なネットワークトラフィックを耐え抜いた

新型コロナウイルスのパンデミックによる影響が尾を引く中、不幸中の幸いであったのが、通信インフラが十分に機能したことです。ビジネスパーソンの多くが在宅勤務に移行し、テレビ会議などで帯域が大きく圧迫されても、通信インフラはデータトラフィックの大幅な増加や利用パターンの変化に対応できたのです。

なぜ大方の予想に反してインターネットはクラッシュしなかったのでしょうか。CSP(通信サービスプロバイダー)は、さまざまな理由から過去20年にわたって積極的に光ファイバーの通信基盤を拡張し、ファイバーネットワークやワイヤレスネットワークの容量を拡大してきました。

2001年9月11日にニューヨークを襲ったテロ攻撃に端を発して、CSPが復旧能力の高い多様なルーティングに取り組んだことや、低遅延接続と99.999%の可用性を誇るSLAで多くの企業顧客を引き付けようとしたこと、これからの5Gにつながる4G LTEへの道を切り開いたことなどが、通信基盤の強化のために重要な役割を果たしました。さらにこうした高度なネットワーキング機能は、OTT(over-the-top)メディアビジネスとの競争を有利に進めるのに役立っています。

例えばVerizonは、2017年にコーニングと11億ドルの契約を締結しましたが、その目的は、4G LTEのカバレッジを拡大し、5Gの展開をスピードアップするCSPの次世代ファイバープラットフォーム用の光ファイバーケーブルとハードウェアを確保することにありました。

高速かつ低遅延を特長とする5Gは、今後オフサイトで業務を行う人々がますます増大していく中で、その際のリモートワークやコラボレーションのエクスペリエンス向上に貢献するでしょう。なお、DXCテクノロジーが実施した2020年エンタープライズリーダーシップ調査によれば、この5Gは、ビジネスに大きな価値をもたらす新たなテクノロジーの1つとして企業からの期待を集めています。

 

通信事業者がコロナ環境下で行った措置

通信事業者がインフラ構築に投資してきたおかげで、幸運にもパンデミックにより急増したブロードバンドやモバイルのトラフィックにもシームレスに対応できました。特にネットワークの混雑緩和への取り組みが盛んな人口密度の高い地域でのサービス提供に関しては、大半のCSPがほぼ通常通りに業務を継続できています。

通信事業者が機能を着実に拡張していなければ、職場から自宅へ、学校から家庭へのシフトに対応できず、ノートパソコンやモバイルデバイスがLTEネットワークやWi-Fiネットワークを猛烈に圧迫していたことでしょう。

キャリアがキャパシティに余力を持たせていたことは、AT&Tの例からも見て取れます。事実、新型コロナウイルスが企業、学校、消費者に与える大きな影響を目の当たりにしたAT&Tは、追加のコストなしで帯域幅を開放したのです。

CSPも、危険なウイルスに立ち向かうことを突如余儀なくされた地域社会、学校、医療施設、政府を支援する措置を講じました。AT&T、CenturyLink、Comcast、Cox Communications、Google Fiber、Sprint、T-Mobile、Verizonなどの多くのブロードバンド事業者や通信事業者が、「Keep Americans Connected Pledge(つながりを保つための共同誓約)」への支持を表明しました。

これらの企業は、Wi-Fi回線を必要とするすべてのアメリカ人にWi-Fiスポットを開放し、パンデミックのために支払いができなくなった住宅用顧客や中小企業顧客へのサービスを停止しないことに合意しました。そのほかにも、第一線で闘う医療従事者の接続を優先したり、学校向けに無料データを提供したりするなど、さまざまな取り組みが行われています。

 

新型コロナウイルスがクラウドシフトを加速

新型コロナウイルスのパンデミックは、企業のクラウド移行を加速させました。クラウドがビジネス変革の鍵を握っていることは周知のことですが、一方でこれまでクラウド移行へ二の足を踏んでいた企業の背中を押したり、クラウド対応させる業務を増やそうと促したりするほどの緊急性は必ずしも存在しませんでした。

しかし、企業が世界中で在宅勤務やバーチャルな共同作業を行う環境を整えなければならない課題に直面したことで事態は一変しました。クラウドは、キャパシティ、スケーラビリティ、低レイテンシ、復旧力いずれの点からも企業のニーズを十分に満たす存在でした。

通信事業者は、必要に応じてデータセンター間で業務を移動させ、災害復旧を行うのに十分な帯域幅とMPLS、メッシュネットワーク、Software-Defined WANを備えていることを実証し、その実力を証明しました。AWS、Azure、Google Cloud Platformが企業顧客を拡大しているように、従来の通信事業者も、すべてのオーディエンスの需要に応えるデジタルサービスプロバイダーとなるための取り組みを大幅に加速させていくでしょう。

例えば、通信事業者のきわめて安全で安定した接続、さらに5Gがもたらすかつてないスピードと影響力は、デジタルIDサービスといった革新的なテクノロジーの理想的な基盤となる可能性があります。

インフラストラクチャ、サービス、速度の拡大に向けて通信事業者が投資を抑える兆候は見られません。CSPは常に政府の影響を受けており、たとえば世界経済の主導権争いを繰り広げる米国と中国が5Gへの投資を牽引しています。もちろん、より多くの人々が通信回線を利用できるようにするという通信業者の主な役割は当面変わらないでしょう。