物理的な距離を遠隔医療で解決する

世の中の医療課題の解決に大きな可能性を秘める遠隔医療。以前より利便性が向上し、利用しやすい価格まで下がったことで、医師や患者からもより受け入れられるようになり、病院と患者の距離を超える新たなプラットフォームとして病気の予防や治療で成果をもたらし始めています。

一般的に遠隔医療は、スマートフォンやタブレットを使用して電話やWeb会議ツールなどで医師とやりとりをすることで、遠隔で医療サービスを受けられることを指します。医師と患者との物理的な距離は問いません。

今までは、病気になったときには病院に直接足を運ぶか救急にかかるしかありませんでした。しかし、デジタル技術が発達した今日では、症状チェッカーで状態を調べたり、オンラインまたは電話で医師に相談したりすることができます。

現在、遠隔医療には一般的な用途として以下の2種類が挙げられます。

  • ちょっとした切り傷など、健康に長期的には影響がないような症状に対する診療です。患者は遠隔で医師に症状を診てもらい、深刻な常態なのか、また治療計画をどうするかを相談できます。
  • 心疾患や糖尿病など慢性疾患を抱える患者が定期的に行う健康診断などです。例えば、単に新しい処方箋が必要な場合など、患者の健康回復に向けた基本的なチェックを行う程度の診察ならば対面で行う必要はありません。

遠隔医療を普及させるための3つのポイント

医療機関、患者どちらの立場でも、遠隔医療の利用を促進する上で大きな要因となるのが、利便性と価格です。しかし、遠隔医療をさらに普及させるには次の3つが必要です。

(1)専門性の強化
遠隔医療をより身近なものとしつつも、コモディティ化を防ぐには、より専門性を高める必要があります。例えば腎臓に問題がある人は、腎臓の専門医に診てもらう必要があります。かかりつけ医なら見過ごしてしまうかもしれない問題にも専門医なら気づくことができます。

(2)自動化の促進
上述した専門医の増強を実際に行うには何らかの自動化が必要です。患者のすべての症状が命に関わるものではありません。その場合には人工知能(AI)を活用したワークフローを利用し、簡単な質問を患者に回答させることで診療を自動化する方法が考えられます。

専門化に着手すると、多くのことが自動化で実現できるようになります。もちろん、最終的には実際の医師が患者と対面する必要がありますが、その前段階で医師の判断を補助する役割として自動化の存在は非常に重要です。

(3)人間味を残す
ジョン・ネイスビッツは1982年の著書「メガトレンド」で、「ハイテク、ハイタッチ」の原則を論じています。これは、テクノロジーと人によるコミュニケーションのバランスを取る必要性を指摘したものであり、医療サービスを再設計する上ではこのコンセプトを指針としなければなりません。

遠隔医療行為を含め、どのようなシステムが構築されるにせよ、テクノロジーを活用する際には常に、どうすれば患者の役に立つのかを十分に理解する必要があります。メリットにならないのであれば、当然のことながら人々はそのサービスを使わなくなってしまいます。

遠隔医療を既存の枠組みにいかに組み込むか

このように、人とのコミュニケーションを何らかの形で維持することが遠隔医療を成功させる鍵となります。あくまで医療サービスの提供を受ける対象は「人間」だということを忘れてはなりません。

もちろん、遠隔医療が何のために使用されるのか、医療計画の中にそれをどうフィットさせるのかということは、依然として熟考するべき課題です。患者に対して病院はサービスの価値を高めることはもちろん、さまざまな選択肢を提供する必要があります。

それは同時に、病院自身がもつ臨床および技術的なリソースを踏まえたうえで、それらをいかに効果的に配分していくかを考えなくてはならないということです。

遠隔医療によって、医療機関が多様なサービスをさまざまな価格で提供できるようになり、また人々も必要な医療を受けられるようになります。今後も、遠隔医療は患者を効果的に治療する上での重要なツールの1つとなるでしょう。