デジタル化の波は保険業界に大きな影響をもたらしています。その中で、新たなチャンスが生まれていると考えているのが、米保険会社大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)です。この変化をいかに企業の利益へと転換できるのでしょうか。ここでは、AIGのジェフ・スコビー氏(生命保険部門最高執行・引受・システム責任者)へのQ&Aから、保険業界の新しいチャンスとは何か、業界はどのように変化しているのか、またInsureTechの現在について明らかにします。

 

――生命保険会社にとって、DXを成功させる鍵は何でしょうか?

スコビー氏:デジタル化の取り組みについては、すぐに手が届くものについてはすでに着手しており、全社的にさまざまなところで成果を挙げています。いま議論の焦点は新規ビジネスの創出であり、おそらくここがお客様にとって最もわかりやすい部分でしょう。しかし、セルフサービス管理、電子契約証管理、電子決済機能を含め、全体的な業務の仕組みにもまだ改善のチャンスはたくさん潜んでいます。生命保険サービスの中に存在する企業とお客様とのやりとりの部分を徹頭徹尾、改善していく必要があります。

 

――その改善とはどのようなものですか?

スコビー氏:まず、私たちはプロセスを簡素化しなければなりません。デジタルを活用することでプロセスを自動化し、即座に情報にアクセスすることができるようになります。場合によっては、お客様だけでなく保険販売者でさえも理解が難しいような「ブラックホール」の部分が発生することがあるかもしれません。その際には、私たちは透明性を確保して、お客様が現在どのプロセスにあるのかをわかるようにする必要があります。

また、お客様の情報を集めるという部分も、デジタル化できる領域ですね。ここでは動的な質問も自動化することが可能です。例えば、「あなたは喫煙者ですか?」といった質問です。この場合、続けて「どんなタバコを吸っていますか?どのくらいの期間喫煙していますか?」といった質問も自動化することが重要です。

保険の引受査定もデジタルで高度化できます。私たちは自動化を前提にプロセス全体を考えていく必要があります。そうすることで業務スピードを劇的に改善し、意思決定の速度を向上させることができます。

 

――アウトソーシングの役割とは何だと考えていますか?

スコビー氏:私たちはクローズド・ブロック(閉鎖勘定)をアウトソーシングしています。ここでは新製品が出ることはありませんが、このクローズド・ブロックは収益性の面でも、お客様との関係という点でも依然として重要です。しかし、クローズド・ブロックは運用が複雑で非効率的ですし、また、時間の経過とともに専門知識も失われていきます。そこで、この部分をアウトソーシングすることでサービスレベルを維持し、コストを抑えようという考えです。また、チームのエネルギーを戦略の方に集中させることもできます。

もう1つの狙いは、アウトソーシングが新しい商品アイデアの開発への貢献になるという点ですね。外部のパートナーに業務の一部を任せている間に、保険会社としては市場のフロントエンド側に集中することができるわけですから。どちらの戦略も重要です。

 

――人工知能とアナリティクスの役割についてはどうでしょうか?

スコビー氏:この領域については1日中語れます。データは私たちがビジネスをする上で欠かせません。アナリティクスを活用すれば、いつどこで保険の解約が起こっているかもわかります。問題が起こってから行動するのではなく、プロアクティブな対処ができるようになります。

もう1つ、新規契約のクロージングにも活かせます。業界全体では、どんなに正しいと思われるプロセスを踏んでも、実際に成約できるのは75%程度です。ですから、アナリティクスを活用して、良い成果を出せる最も高いポイントを特定すれば、そこに注力することができます。

ソフトウェアロボットは効率化に役立ちます。私たちは保険契約の個々の保険料をすべてチェックするロボットを導入しています。以前は部分的にしかチェックできなかったので、すべてを確認することができませんでした。今はロボットを活用して100%チェックできるようになったことで、ミスが大幅に減少しています。

 

――デジタル人材を採用して維持するのは難しいと思いますが、どのようなアプローチを取っていますか?

スコビー氏:生命保険業界は人材不足ですが、AIGでは本当に優秀なテクノロジーのプロフェッショナルがたくさん働いてくれています。デジタル人材が業務に魅力を感じるかは、業界にデジタル化によって改革できるチャンスがあるかという点にもかかっています。

もう1つ、AIGにおけるデジタル人材の重要な要素は、彼らが私たちの製品やサービスそのものと、お客様への提供価値をつなぐ役目を担っていることです。例えば、生命保険を契約しているお客様にとって、生命保険の存在は、何か有事があったときに金銭面で非常に助けになるのもです。デジタル人材はAIGにおいて、まさにそういった存在です。

 

――InsureTech企業は、競争相手、サプライヤー、パートナー、買収相手のどれにあたりますか?

スコビー氏:全てです。InsureTechは保険業界の大きな溝を埋めるという意味で私たちの手助けになります。例えば、生命保険が必要でそのためのお金もあるが、加入していない人達がいます。InsureTechやその他のスタートアップは、こうした層にアプローチするための新たなデジタルマーケティングを手がけています。また、InsureTechはお客様のエンゲージメントを高めるシンプルなプロセスのサービスを提供しています。

 

注:このQ&Aは、過去にDXCマガジン、「Forward」に掲載されたジェフ・スコビー氏のインタビューを再編集したものです。

保険証券はAmerican General Life Insurance Company(AGL)によって発行されています。(The United States Life Insurance Company in the City of New York(US Life)によって発行されるニューヨーク州を除く)発行会社AGLおよびUS Lifeは保険商品の金融債務に対する責任を負う、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)のメンバーです。