テクノロジーの進歩で現れた「恐怖」

最新のテクノロジーを業務で扱えることは、どんな人にとっても嬉しいことではないでしょうか。少なくともいまから数十年前までは、確実にそうだったはずです。いまや人々がごく当たり前に使用しているパソコンですら、その当時は社内の一部のスタッフしか使えないということも珍しくありませんでした。

それに対して今では、1人1台のパソコンが与えられ、しかも企業によっては3、4年ごとに新しいものにリプレースされます。こうしたテクノロジーの進歩は、コンピュータ系の職かどうかにかかわらず嬉しいことではないでしょうか。

ですが、こうした感覚はスマートフォンやタブレットが登場したことで、また違うものに変わってきました。技術が急速に進化し、業務で使用しているテクノロジーが急に古臭いものになってしまうことすらあります。テクノロジーに対して感じていた「嬉しさ」が「失望」へと変わってしまうだけではありません。いまでは「恐怖」というまったく違った感情を抱くようにもなっています。

どうしてこのような変化が生まれたのでしょうか?最近では数々のメディアや専門家が、ロボットやテクノロジーが多くの人の仕事を奪うだろうと指摘しています。しかし、こうした漠然とした恐怖心だけを抱いていても、新しいテクノロジーに向き合うことはできません。ロボットと「友達」になり、デジタルの世界で競争力を維持するには、この新しい波に乗って新しいテクノロジーを学ぶことが不可欠です。

ロボットやAIなどによって起こり得ることとは?

ロボットや人工知能(AI)は今後どのように人間に取って代わっていくのでしょうか。最近ではこうした議論や研究は絶えません。その際によく例示される職業が、教師や銀行員、判例調査を行う若手弁護士、介護士などです。例えば、以下のような見出しの記事が国外のメディアに取り上げられています。

  • ロボットは個別指導の先生にふさわしいが、ロボットは教員資格を取れるのか
  • 欧州議会議員がロボットの法的地位とキルスイッチの必要性について票決
  • ロボットが宿題を採点できるようになるだろうか?

言い換えれば、いまホワイトカラーはみな脅威にさらされています。先進国でホワイトカラーが大量に失業してしまうことは、多くの人にとって恐ろしい話です。メディアなどが、「現在の仕事の●●%はAIに置き換わる」という口調で、過度に大げさな数字や情報を報じることもあります。

しかし、それはすぐに悲観することではありません。農業や製造業の過去の歴史が示しているように、自動化のテクノロジーの進歩によって最初はある程度の置き換えが起こったとしても、時間が経過するとともに新たな雇用をもたらすのです。

まだAIやロボットにできないことは多い

最近では、企業・組織はプロセスオートメーション用ロボットや、医療研究や診断、不正の検出や防止に至るまで、あらゆるものにAIを積極的に取り入れています。

こうした状況で人々や組織が取るべき方向性は2つあります。これらのテクノロジーをただ導入して運用コストを削減するか(=人の代替)、それとも従業員の作業効率を向上させて、より大きな価値または利益を生み出すことを選択するか。この2つです。

ロボットが宿題を採点してくれれば、教師は授業時間をもっと確保でき、おそらく1クラスあたりの生徒数を減らすことができます。コンピュータによる高度な診断技術や遠隔操作式ロボットハンドを使えば、米国にいる熟練外科医がアフリカの子どもに遠隔手術をすることもできるでしょう。オフィスでは、手作業で繰り返し行っていた業務にAIを適用することで、付加価値が高く自身の興味に適した作業や顧客サービスに、より注力できるようになります。

こうしたテクノロジーを次世代のツールとして賢く取り入れることができれば、業務品質は高まり、仕事はより生産的でやりがいのあるものになります。そして、私たちが潜在的に抱えている、まだ計り知れないスキルをもっと引き出してくれるかもしれません。

自動車の例で考えてみましょう。ほとんどの自動車工場では、ロボットが車体を塗装しています。一度手順さえ分かればロボットは人間よりもはるかに生産性が高く、一貫性のある仕事をします。しかし、ロボットが手掛けた車が事故に遭った場合、その修理にあたるのは熟練の修理工です。修理は毎回異なるため、この作業はロボットが簡単にできるものではないのです。

テクノロジーをどう使い、どう対応するかは人が決める

テクノロジーの次の波を恐怖と捉えるか、それとも受け入れるか。私たちは個人としてどちらかを選ぶことができるのです。もし受け入れるならば、自分独自のスキルや価値を向上させ、もっと高度なものにしていく必要があります。先ほどの例で言えば、ロボットやAIにはできないような修理や塗装のプロになるということです。または、業務プロセスやビジネスがどのように成り立ってどのように動いているのかを判断したり、何を自動化でき何を自動化できないのかを判断する力が必要です。

さらに重要なのは、仕事をする以上、企業や組織が最終的にやり取りをするのはお客様、つまり「人間」です。優れた組織の特長によく見られるのが、活力や積極性にあふれた文化であり、そうした文化は、組織における従業員の行動の積み重ねから成っているのです。テクノロジーの発展は組織の科学という面もありますが、その中で、現状から最善の結果を得るために何かを実行できる力は、まだ私たち人間の手の中に多く残されているのです。

変化に対して見て見ぬ振りをしてはいけない

いくら自動化が進んでも、それが何も役にも立たないものであったり、技術的に低品質だったりすれば、誰からも利用されることはありません。自動音声応答の電話メニューから、車の音声操作、スーパーマーケットのセルフレジまで、数多くの例があります。良くも悪くも、違いを生み出すのは人間です。

近い将来、恐らく私たちはGoogleの自動運転車に乗り、AIを利用する医師が診察を行い、ロボットの補助教員が教室にいて、高齢者向けのロボット介護士が活躍する世界に住んでいるでしょう。そうした世界が私たちにとってより良いものかどうかは、私たちの組織や私たちが作る社会、そして私たちが行う選択にかかっているのです。