物体のコピーをデジタル上に表現するデジタルツイン

「デジタルツイン」というとまるでSFのような印象を受ける方もいるかもしれません。しかし、デジタルツイン技術は、データアナリティクス、人工知能(AI)、IoTのおかげで、ますますポピュラーになりつつあります。

デジタルツインは、物理的な物体をソフトウェアベースで表現したものです。物理的な物体にいくつものセンサーを搭載することで、その健康状態や稼働状態、動き、位置、そのほかの関連状態を監視することができます。

例えば、自動車を例にとってみましょう。車内のセンサーデータを収集することで、リモートコンピュータ上でその車がデジタルなレプリカとして表現されます。これがデジタルツインを作成するということです。このデジタルツインによって、位置やエンジン性能、燃料消費、温度、さらにはタイヤの空気圧まで、車の状態をリアルタイムに把握できるようになるのです。

製造業では従来、この技術をエンジニアリング環境で活用してきました。しかし、現在では社内の他の分野にも急速に広がりつつあります。

この理由として、デジタルツインの技術によって企業はIoT機器とそのデータをより有効に活用できるようになるからです。企業全体の意思決定から各組織のビジネスプロセスまで、さまざまな分野で業務効率の向上に寄与します。

調査会社ガートナーによると、IoTプロジェクトを実施している組織の13%はすでにデジタルツインを使用しており、62%がデジタルツインの活用を準備中であるか、積極的にその計画を立てている段階にあります。金額ベースで見ると、ジュニパー・リサーチによれば、デジタルツインの市場規模は2019年の推定98億ドルから、2023年には130億ドルに増加する見込みです。

ビジネスプロセスの改善や意思決定の支援にも

実際のメリットをいくつか詳しくみてみましょう。

まず、デジタルツインは業務効率向上に役立ちます。多くの会社では、多数の部署でさまざまなアプリケーションが要求するデータを生成している機器があります。この機器にデジタルツインを応用すれば、データを必要とするアプリケーションがデジタルツインに問い合わせるだけでよく、オリジナルの物理的な機器は中断されずに動作を続けることができます。

今年初めにガートナーが発表した報告書によると、「デジタルツインのデータを業務のルール、最適化アルゴリズム、その他の規範的分析(Prescriptive Analytics)技術と組み合わせれば、デジタルツインは人による意思決定を支援したり、さらには意思決定を自動化したりすることもできる」とされています。(※「How Digital Twins Simplify the IoT」)

例えば、業務のルールやプロセスを含む組織全体のデジタルツインを作成し、パフォーマンスを強化するための仮想のシナリオに基づく変更案をデジタルツインに適用すれば、会社にどのような影響が出るかを、実際に変更を加える前にシミュレーションすることができます。

一部の先進的な組織は効率化のコンセプトをさらに推し進め、デジタルツインを他の技術と統合しています。複数のデジタルツインインスタンスを統合し、AIや高度なアナリティクス技術と組み合わせることで、企業のオペレーションセンターがパフォーマンスの傾向とベースラインを定めたり、資産の保守・追跡・管理業務を改善したり、多くのビジネスプロセスを自動化したりしています。

デジタルツインの本格化はもう始まる

デジタルツインの導入にあたり、障壁の数は多くありません。ただし、その数少ない壁の1つであるデジタルツインインスタンスの作成が難しいのです。独特なスキルセットを必要とする複雑なプロセスであるため、現在、その潜在的な成長率が2桁に達するような市場でありながらも、大手テクノロジーベンダーに企業からのサポートの依頼が集中しているのが現状です。

テクノロジー企業はデジタルツインプラットフォームの提供を始めています。あるテクノロジープロバイダーによると、デジタルツインは「IoTサービス」であり、「物理的な環境を理解するモデルを作成するためのもの」であり、また「人々、場所、機器間の関係と相互作用をモデル化する空間インテリジェンスグラフを作成するためのもの」です。

このようなレプリカによって、個々のセンサーからではなく物理的な空間からデータをクエリできるようになります。その結果、再利用性や拡張性に優れ、また空間的に認識された経験が構築され、それがフィジカルとデジタルの世界を横断して流れるデータをつなぎ合わせるのです。

より多くの組織がデジタルツイン技術の採用に動き、大手プレイヤーはその市場に参入しています。もう間もなく、この技術はメインストリーム化するでしょう。