5Gでは膨大な投資が必要に

新たな技術革新はよく過剰な喧伝に陥りがちです。2018年に韓国で開催された冬季オリンピックは、まさに次世代通信規格5Gの誇大宣伝の実例となりました。観客とアスリートはそのネットワークのプロトタイプを利用したものの、そこでははっきりとした進化を感じることができませんでした。それから1年もしないうちに、地球の反対側ではAT&T、T-モバイル、ベライゾンが「フェイク5G」サービスをめぐる壮大な論争に巻き込まれることとなりました。

この誤った期待と失望のサイクルは、あいにく3Gと4Gの時代を知る私のような人間にはなじみ深い現象です。私の考えでは、5Gの場合はさらに厳しいでしょう。事業者がネットワークの構築やアップグレードに伴って負担しなければならない膨大な投資額に見合うような、十分に魅力的なビジネスモデルが構築されていないからです。

5Gの提供には、米国だけで年間2000億ドルかかると推定されています。英国で3Gの免許を取得するために事業者が2000年に支払った金額は350億ドルですので、いかに大きな額であるかおわかりでしょう。

それでも、客観的に見て5G技術は現実になりつつあります(ファーウェイの意図に対して複数の欧米諸国が懸念を表明してはいますが)。数年前から期待感を高めるような使用例もさかんに紹介されています。しかし、これで利益をあげることができなければ、すべては電気通信エンジニアの夢物語に終わってしまう可能性があります。どんなに先進的な技術でも、目的の無いものに投資を行うのは本末転倒です。

周波数帯の共用で5Gの普及は進むか

この袋小路から抜け出すために、ある存在が意外な手助けとなります。それは規制機関です。フランスの電子通信・郵便規制庁(ARCEP)、米国の連邦通信委員会(FCC)、英国の情報通信庁(Ofcom)などを含む世界中の規制機関が、ある1つの共通するアイデアにたどり着いたのです。つまり、希少な周波数資産を共有することでリスクを相互化する、という独創的なものです。

この動きは同調的に各地で起こっており、最新の例が米国で見られています。
7年近い月日を経て、FCCは2018年末、市民ブロードバンド無線サービス(CBRS)※にライセンスを交付しました。
※連邦政府が管理していた3.5GHz周波帯を民間と共同利用できるようにしたもの

これは、直接的に関与する個々の電気通信事業者だけでなく、通信業界全体に変革をもたらします。CBRSアライアンスの会員をざっと見てみると、Googleやインテルから、コーニング(ガラスメーカー)、ソニーまで(そしてもちろん、ファーウェイも入っています)、予想外の参加者を含む幅広い顔ぶれが揃っています。

このことは、インダストリアルIoT(IIoT)から、Wi-Fiより高品質で安価なキャンパス内のプライベート通信ネットワークまで、5Gではより多様なサービスが提供されることを示唆しています。

相互所有の動きは加速しており、米国のこうした状況は世界の例のうちの1つに過ぎません。フランスでは、2015年から事業者が周波数の共有をテストしています。英国ではOfcomがより多くの周波数帯を開放する一方で、ボーダフォンとテレフォニカもこのムードを逃すまいとネットワーク資産の共有を進めていることを明らかにしました。欧州の他の地域でも、5G周波数のオークションが行われるようになり、それに伴って共有がどれほど進展していくかが注目を集めています。

こうしたアプローチはある重要な示唆を含みます。すなわち、イノベーションはたとえ独創的で目を引くものであっても、さまざまな条件が重なりあって初めて牽引力のあるものとなるということです。それらの条件とは、技術、ユーザーの関心と行動、価格、そしてもちろん規制です。これらの重要な要素がすべて調和して輝かしい技術が誕生するのです。

実行可能かつ魅力的なビジネスモデルが誕生した今、今度こそ喧伝が現実と一致し、これからの5Gの普及へとつながっていくでしょう。